ワロドン

[日本伝承][妖怪]
 ワロドン,オジドン【日本語】

鹿児島県に伝わる河童(カッパ)の仲間で、山童(ヤマワロ)の一種。身体をバラバラに切り刻んでもまた復活できる。けれどもその肉片を食べてしまうと復活できない。また、水たまりに1000匹ものワロドンが隠れ棲んでいることがあったという。

バラバラになっても復活する不可思議な河童!?

ワロドンは鹿児島県の伝承に登場する山に棲む河童(カッパ)の仲間で、山童(ヤマワロ)の一種と考えられている。山童というのは山に棲む河童の仲間で、九州地方を中心にその伝承が広がっている。河童の中には山と川とを行ったり来たりと大移動を繰り返す仲間がいて、山童もその一種である。川に棲んでいるときには河童と呼ばれるが、山の奥深くに入ると山童になると信じられた。山童は河童とは異なる風貌、性質を持っていて、山仕事を手伝ってくれたり、さまざまな悪戯をする。ワロドンも、そのような山童の一種なのだろう。草野巧はワロドンの名前の由来を山童(ヤマワロ)の「ワロ」に「殿(どん)」をつけ加えたものだと説明する。オジドンと呼ばれることもあるようだ。

肝属郡百引村1)に伝わっている伝承によれば、普段は1mくらいの身長だが、どうやらワロドンはその大きさを自在に変えることが可能だといい、馬の足跡に溜まった水たまりの中に1000匹ものワロドンが隠れ棲んでいたという伝承がある。そのような水たまりは非常に濁っていて、犬も逃げ出しうという。また、ワロドンはその身体をバラバラに切り刻んでも、しばらくすると元の姿に戻って復活することができるという。そのため、ワロドンが元の姿に戻らないように、その肉の一切れを食べてしまえばいいと伝えられている。河童の伝承の中にも切り落とした腕を取り返しに来たという話があって、河童の腕もどうやら再びくっつくようだ。ワロドンの能力はそのような河童の能力を特化させたものなのかもしれない。また、河童(カッパ)同様に金物を嫌うともいう。

姿、形に関する言及はあまりない。そのため、ワロドンが具体的にどのような姿、形をしているのかは分からない。けれども、ワロドンは山童の仲間であるので、おそらくは子供のような姿をしていて、全身サルのような短い毛に覆われているものと想像できる。

1) 肝属郡百引村(きもつきぐんもびきむら):大隅半島の北西部にあった村。1956年に曽於郡輝北町(そおぐんきほくちょう)の一部となり、現在は2006年の合併により鹿屋市(かのやし)の一部となっている。

《参考文献》