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ヴァルキュリャ

[北欧神話]
 Valkyrja(ヴァルキュリャ)《戦死者を選ぶもの》【古ノルド語】
 Walküre(ワルキューレ)【ドイツ語】

オージンの従女。天馬に乗って戦場を駆け巡り、有望な英雄を殺して、その魂をオージンの館へと運ぶ。こうして運ばれた英雄の魂はエインヘリャルになるが、オージンの館で彼らを歓待するのも彼女たちの役目で、歌ったり踊ったり、あるいは麦酒を注いで回ったりする。美しい乙女で、甲冑に身を包んでいる。

戦死した英雄たちの魂を運ぶ戦乙女たち!

ヴァルキュリャは北欧神話などに登場する乙女の戦士たちのことで、しばしば「戦乙女」とか「天女」などと訳される。彼女たちはオージンの娘、あるいは従女で、美しい乙女の姿をしていながら、その全身を勇ましく鎧兜に身を包み、馬にまたがって戦場を駆け巡るという。古ノルド語のValkyrja(ヴァルキュリャ)というのは《戦死者を選ぶもの》を意味しているが、ドイツ語のワルキューレ、あるいは英語のヴァルキリーという表記の方で知っている人の方が多いかもしれない。ヴァルキュリャたちは、その名前が示す通り、戦場で有望な戦士を発見すると、槍で突き刺してその命を奪う。もちろん、これは最高神オージンの意思で行なわれるのであって、こうして選ばれた戦死者たちの魂はオージンのもとへと連れて行かれ、ヴァルホッルという彼の大広間に運ばれて、エインヘリャルになって歓待される。エインヘリャルたちは神々と巨人族との最終戦争であるラグナロクの際に、神々の側に立ち、神々と一緒になって巨人族と戦う役目を負っている。そのため、毎朝、互いに殺し合いをして互いの技を鍛えている。夕方になると再び復活して、オージンとともに宴を楽しむ。こうして、再び、夜が明けると果てしない戦いを繰り広げるのである。ヴァルキュリャたちは戦死者を選別するだけでなく、ヴァルホッルにおいてエインヘリャルをもてなす役目も負っている。そのため、毎晩、エインヘリャルたちのために、踊ったり、歌ったり、あるいはビールを注いだりしてエインヘリャルたちを楽しませるのである。

谷口幸男はヴァルキュリャの起源を人間の守護霊であるフュルギャ(Fylgja)に求めている。フュルギャは睡眠中に人間の身体から分離する存在で、獣や白鳥などに化身することができる。やがて英雄の恋人として登場するようになり、そこに甲冑を着た乙女の姿が付与されてヴァルキュリャになったのではないかと解釈している。

ヴァルキュリャたちは『古エッダ』の中にしばしば散見されるが、彼女たちの名前は勇ましいものや不気味なものが多い。たとえば、スケグル(Scøgul)やグン(Gunnr)、ヒルド(Hildr)はそのままズバリ《戦》を意味している。また、ゲンドゥル(Gøndul)は《魔力をもつ者》、ゲイルスケグル(Geirscøgul)は《槍の戦》、フリスト(Hrist)は《轟かすもの,嵐》、ミスト(Mist)は《霧》を意味している。戦場に近づいてくる嵐は、虚空を蹴るヴァルキュリャたちの騎馬の蹄の音だと信じられるようになった。それに由来するのだろう。スケッギョルド(Sceggiǫld)は《斧の時代》、スルーズ(Þrúðr)は《強きもの》、フレック(Hlǫcc)は《武器をがちゃつかせるもの》、ヘルフィヨトゥル(Herfiǫtul)は《軍勢の縛め》、ゲル(Gǫll)は《騒がしきもの》、ゲイレルル(Geirǫlul)は《槍を持って進むもの》、ランドグリーズ(Randgríð)は《楯を壊すもの》、ラーズグリーズ(Ráðgríð)は《計画を壊すもの》、レギンレイヴ(Reginleif)は《神々の残されたもの》という意味である。ヴァルキュリャたちは揃いも揃って荒々しい名前が多いようだ。

ヴァルキュリャたちはさまざまな伝承に顔を出し、しばしば英雄たちとの悲恋が描かれる。基本的にはヴァルキュリャたちはオージンに忠実である。しかし、そのオージンの意思に背いて、死すべき運命の英雄を助けたブリュンヒルド(Brynhildr)というヴァルキュリャは有名で、特に彼女とシグルズの悲恋は多くの詩人たちによって描かれている。

《参考文献》