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カ(五十音順)

カー

[エジプト神話]
 𔁭〔kȝ〕(カー)【古代エジプト語】
(※ エジプト・ヒエログリフの表示にはAegyptus Fontが必要です)

カーは古代エジプト人が考えた「魂」の一つである。どうも古代エジプト人は人間を五つの要素から構成されていると考えていたようである。すなわち、肉体、バー、カー、名前、そして影である。バーとカーはどちらも日本語では「魂」と訳される。バーは我々が通常考える「魂」に比較的近く、死後、肉体から離れて飛び回る。一方のカーは生まれたときから人間に備わっているもので、いわば、人間の活力、生命力の象徴のようなものであると捉えるとイメージしやすいかもしれない。チェルニーはアラン・ガーディナー卿の言葉を引いて、個人と独立した存在であるという解釈が妥当だとしている。つまり、カーは常に個人の傍らにいて、人間の活力や生命力を象徴している「魂」なのである。

死後、このバーとカーという二つの「魂」が一体化することで、魂はアクと呼ばれるものになる。そうなれば祝福された魂として、死者たちはイアル野と呼ばれる楽園で永遠に暮らすことができるのである。そのため、バーとカーが滞りなく合体できるように、古代エジプト人たちはさまざまな儀式を執り行なう必要があった。

カーはその存在を維持するために、常に食事を必要としたらしい。それは宿る肉体が死んだあとも変わらない。だから、カーは宿主の死後も食べたり飲んだりする必要があった。古代エジプト人が死者に対して食べ物を供えたり、食べ物の絵を捧げたりするのはこのためで、この供え物が途切れるとカーは消滅してしまう。もし、万が一、魂がアクになる前にカーが消滅してしまうようなことになれば、人々は「あの世」で永遠に生きられなくなってしまう。そうならないように、「カーの召し使い」と呼ばれる墓守が死者たちに食べ物を備えたのである。

カーは、人間の傍らに立つ小さな像として表現されたが、それは宿主と同じ顔をしている。そして頭上には一つのヒエログリフを載せている。「肘を曲げて差し挙げている両腕」のヒエログリフで、つまり、カーのヒエログリフと同じ形のものである。カーは、創造神クヌムが人間をつくったときに一緒につくったものだとされている。

カークス

[ギリシア・ローマ神話]
 Cacus(カークス)《悪い》【ラテン語】
(※ κάκος《悪い》【古典ギリシア語】に由来)

ローマ神話に登場する巨人。火の神ウゥルカーヌス(英語ではヴァルカン)の息子で、もともとはローマの火の神さまだったと考えられている。三つの頭を持ち、口からは火を吹いた。アウェンティーヌスの丘(現在のテルミナ駅周辺)の洞窟に棲み、周辺の人間を喰らう怪物であった。あるとき、英雄ヘーラクレースが十二の難業の一つとしてゲーリューオーンの牛を追っているときに、まんまとその牛を盗みだした。しかし英雄は牛の鳴き声を頼りにカークスの洞窟へやってきて、三つある首を絡ませ、窒息させて退治してしまった。

ガーゴイル

[中世ヨーロッパ伝承]
 Gargoyle(ガーゴイル)【英語】
(※ gargouille(ガルグイユ)《喉》【フランス語】に由来)

中世ヨーロッパの教会などの建築物にはグロテスクな怪物の彫刻が飾られていることがある。ドラゴンのような怪物だったり、鳥と人間を混ぜたような怪物だったりする。ノートルダム大聖堂の壁のあちこちから突き出したガーゴイル像などは非常に有名である。もともとは雨樋の吐水口の役割を果たしていた。建物に降った雨水は雨樋を伝ってガーゴイルのくちばしから外に流れる仕組みになっていた。それと同時に魔除けの役割や、信仰心の薄い人間に対する戒めの役割も果たす。日本の鬼瓦も恐ろしい顔で周囲を睨みつけているが、あれと似たようなものであろう。だからこそ、よりグロテスクなものが好まれたと言える。

ガーゴイルはフランスの怪物グルガイユ(gargouille)に起源を持つ。グルガイユとは《喉》という意味で、その名が示すように、北東フランスのルーアンの街でセーヌ河の水をガブガブと飲んでは吐き出して大洪水を引き起こしたり、沼地に牛や旅人を引きずり込んで貪り喰ったり、生け贄を要求したりしたという。この地にキリスト教の布教にやってきたサン・ロマンによって退治され、教会にその首が飾られたという。

『D&D』では、これらの彫像ガーゴイルを魔力に操られて動き出すモンスターという設定にした。彫像だと思って油断していると突然、襲い掛かってくるモンスターというわけである。この影響で、現在のゲームやファンタジィ小説ではお馴染みのモンスターになっている。

ちなみに、雨樋の吐水口に怪物をあしらうという発想は古代ギリシアの時代から見られるという。ヘビやライオンなど、さまざまな動物の彫像が用いられていたらしい。

ガーナー森(ガーナームイ)

[沖縄伝承][妖怪]
 ガーナー森〔Gānāmui〕(ガーナームイ)《たんこぶ森》【沖縄語】

ガーナー森(ガーナームイ)は沖縄県那覇市の漫湖のほとりに棲んでいたとされる人喰い島。漫湖の真ん中に浮かぶ島で、自由に動き回り、周辺の田畑を荒らしたり、人や家畜を襲って喰ったりした。村人たちは困り果てて神さまにどうにかしてくれるように嘆願し、神さまはガーナー森の尻尾に石を落として地面に固定してしまった。それ以来、ガーナー森は動かないという。現在では那覇市の指定文化財に登録されている。

カーバンクル

[ヨーロッパ伝承]
 Carbuncle(カーバンクル)《柘榴石》

十六世紀に南米にやってきたスペインの開拓者たちが目撃したとされる幻の獣で、額には燃えるように赤く輝く宝石のような器官を持っていたという。この宝石を手に入れた人間には富や幸せが訪れると信じられたが、未だに誰も捕獲したことがない。

ガアプ

[悪魔学]
 Gaap(ガアプ)、Tap(タプ)

ブレトンが描くガアプ

ソロモン王が使役した七二匹の悪霊の一匹。タプ(Tap)とも。太陽が南の十二宮に入ったときに、偉大なる四人の王を引き連れて出現する。ブルトンは二本の角、コウモリのような翼をつけた姿でガアプを描いている。愛や憎しみを引き起こし、人間を愚かにも物知りにもできる。また、意のままに人を瞬間移動させることもできる。かつては能天使の位に就いていた。六六の悪霊の軍団を率いている。

ガアプの紋章(シジル) (33.) GAAP. - The Thirty-third Spirit is Gaap. He is a Great President and a Mighty Prince. He appeareth when the Sun is in some of the Southern Signs, in a Human Shape, going before Four Great and Mighty Kings, as if lie were a Guide to conduct them along on their way. His Office is to make men Insensible or Ignorant; as also in Philosophy to make them Knowing, and in all the Liberal Sciences. He can cause Love or Hatred, also he can teach thee to consecrate those things that belong to the Dominion of AMAYMON his King. He can deliver Familiars out of the Custody of other Magicians, and answereth truly and perfectly of things Past, Present, and to Come. He can carry and re-carry men very speedily from one Kingdom to another, at the Will and Pleasure of the Exorcist. He ruleth over 66 Legions of Spirits, and he was of the Order of Potentates. His Seal is this to be made and to be worn as aforesaid, etc.

(33)ガアプ 三三番目の悪霊はガアプである。彼は偉大な長官にして強力な大公である。太陽が南の十二宮のどこかに入っているときに人間の姿で出現し、まるで旅先案内人であるかのように四人の偉大かつ強力な王を連れている。彼の職能は、人間を無感覚、あるいは無教養にすることで、同時に哲学やあらゆる教養科学において、人間を物知りにすることである。彼は愛情や憎悪を引き起こすことができ、また、汝に彼の王たるアマイモンの領土に属するものを清める方法を教えるだろう。彼はほかの術者の拘束している使い魔を解放することができ、偽ることなく完璧に過去、現在、そして未来のことを答える。彼は、術者の願望や快楽で、ある国から別の国へと人間を瞬時に移動させ、戻すことができる。彼は六六の悪霊の軍団を統治し、かつて能天使であった。彼の紋章は上記のようにつくられ、身につけられるべきである。

(メイザース&クロウリィ『The Lesser Key of Solomon, GOETIA』より)

カーリヤー

[インド神話]
 कालिया〔Kāliyā〕(カーリヤー)【サンスクリット】

インド神話に登場するナーガの王。すべてのナーガたちの始祖とされる。ヤムナー河に棲み、毒の息を吐いていたため、周辺の草木が枯れ、鳥や獣たちが死んだ。そこで英雄クリシュナによって退治され、海中にあるラマナカ島に移住させられた。この戦いの際にクリシュナがカーリヤーの鎌首を踏みつけたため、のちのカーリヤーの一族の首にはクリシュナの足跡が残ったとされる。

ガイア

[ギリシア・ローマ神話]
 Γαῖα(ガイア)、 Γῆ(ゲー)《大地》【古典ギリシア語】

ガイア、あるいはゲーはギリシア・ローマ神話に登場する大地の女神。ヘーシオドスの『テオゴニアー(神統記)』ではカオスに続いてうまれた二番目の女神として、多くの神々の始祖となっている。大地を擬人化した女神で、天空神ウーラノス、山の神々オロスたち、それから海洋神ポントスを生んだ。ウーラノスを配偶者として百腕巨人ヘカトンケイル族、一眼巨人キュクロープス族、それからクロノス率いるティーターン族を生んだ。ウーラノスはヘカトンケイル、キュクロープスを恐れて、ガイアの子宮へと押し戻した。これに苦しんだガイアはティーターン族を呼び、父ウーラノスを襲うようにそそのかす。唯一、クロノスが名乗りを上げて、ガイアが与えた鎌(ハルペー)でウーラノスの男根を切り落とす。これにより、ヘカトンケイルたち、キュクロープスたちは子宮から解放され、天と地は切り離された。こうして世界の支配権はウーラノスからクロノスへと移された。ウーラノスから滴った血がガイアの上に落ち、復讐の女神エリーニュス、トネリコの木の精メリアー、巨人族ギガースらが生まれた。ウーラノスが失脚した後、ガイアは今度はポントスと交わって海の神々を多数生んだ。

ウーラノスから覇権を簒奪したクロノスもヘカトンケイルやキュクロープスたちを恐れ、彼らをタルタロスへと放り込んだ。クロノスがゼウスを生み、ゼウスがクロノスに反旗を翻したとき、ガイアはヘカトンケイルとキュクロープスを味方につけるようにゼウスに予言をし、結果、ゼウスは彼らを味方につけ、クロノスから支配権を簒奪することに成功する。

ゼウスらオリュムポスの神々が世界の覇権を握ると、自分たちに逆らったティーターン神族たちをタルタロスへと放り込む。息子たちに対するこの仕打ちに怒ったガイアは、ギガースたちをオリュムポス山へと差し向ける。ギガースたちが敗北したのを見ると、今度はタルタロスと交わって怪物テューポーンを生み出し、天界へと攻撃させた。テューポーンが倒されたあと、ガイアは神話の表舞台からは姿を消す。

大地ガイアは神託を司る女神でもあった。デルポイの神託所はもともとガイア、あるいはその化身であるヘビの怪物ピュートーンのものだったが、あとからやってきた神アポッローンに譲渡された。古代ギリシアの人々は、宣誓をするときにはガイアに対して行ない、この宣誓はたとえゼウスであっても覆せないものとされていた。

開明獣(カイミンショウ)

[中国神話][中国伝承]
 開明獣(开明獣)〔kāimíngshòu〕(カイミンショウ)【中国語】

中国神話において、天帝が住む崑崙山の宮殿を護るとされる神獣。九つの門があり、東側にある正門である開明門を守護することからこの名前がついたようである。虎の身体に人間の頭、九本の尾を持つ獣で、書物によっては九つの頭を持つとも書かれている。『山海経』でも虎の身体と人間の頭を持った獣が描かれているが、その頭の額の部分には小さな頭が八つ並んだ姿で描かれている。おそらく九つの門を見張るために九つの顔を持っていると想像されたのだろう。

カイム

[悪魔学]
 Caim(カイム)、Camio(カミオ)

ブルトンが描いたカイム ブルトンが描いたカイム

カイム、あるいはカミオはソロモン王が使役したとされる七二匹の悪霊の一匹でツグミの姿で出現するが、ただちに剣を携えた人間の姿に変身するという。ブルトンは二枚の絵を描いていて、後者はツグミの帽子をかぶり、翼や尾などをあしらった服を着ている人間の姿で描かれている。鳥や獣の言葉を理解させ、それらを駆使して詭弁を弄するという。もともとは天使たちの中でも位の低いエンジェルの位にいたが、現在では三〇の悪霊の軍団を率いる地獄の長官である。

カイムの紋章(シジル) (53.) CAMIO or CAIM. - The Fifty-third Spirit is Camio, or Caim. He is a Great President, and appeareth in the Form of the Bird called a Thrush at first, but afterwards he putteth on the Shape of a Man carrying in his Hand a Sharp Sword. He seemeth to answer in Burning Ashes, or in Coals of Fire. He is a Good Disputer. His Office is to give unto Men the Understanding of all Birds, Lowing of Bullocks, Barking of Dogs, and other Creatures; and also of the Voice of the Waters. He giveth True Answers of Things to Come. He was of the Order of Angels, but now ruleth over 30 Legions of Spirits Infernal. His Seal is this, which wear thou, etc.

(53)カミオ、あるいはカイム 五三番目の悪霊はアミオ、あるいはカイムである。彼は偉大なる長官で、はじめはツグミと呼ばれる鳥の姿で出現するが、その後、鋭い剣を携えた人間の姿に変身する。彼は燃え盛る灰や炭の中で質問に答えているように見える。彼は素晴らしき論者である。彼の職能はあらゆる鳥の鳴き声、牛のいななき、犬の吠え声、その他の生き物たちの言葉を理解させ、同様に水の声をも理解させる。また未来の事柄について真の答えを与える。彼はかつてエンジェルの位にいたが、現在では三〇個の地獄の悪霊の軍団を統治している。これが汝のまとうべき彼の紋章である。

カオス

[ギリシア・ローマ神話]
 Χάος(カオス)《穴っぽこ》【古典ギリシア語】
(※ 後代の詩人たちからは「混沌」と解釈されるようになるが、原義は《穴っぽこ》)

カオスはヘーシオドスが唱えた創世神話の中で、最初に世界に存在した存在。カオスの原義は《穴っぽこ》であり、宇宙にぽっかりと穴があいて、世界は始まるのである。

ἦ τοι μὲν πρώτιστα Χάος γένετ', αὐτὰρ ἔπειτα
Γαῖ' εὐρύστερνος, πάντων ἕδος ἀσφαλὲς αἰεὶ
ἀθανάτων, οἳ ἔχουσι κάρη νιφόεντος Ὀλύμπου,
Τάρταρά τ' ἠερόεντα μυχῷ χθονὸς εὐρυοδείης,
ἠδ' Ἔρος, ὃς κάλλιστος ἐν ἀθανάτοισι θεοῖσι,
λυσιμελής, πάντων δὲ θεῶν πάντων τ' ἀνθρώπων
δάμναται ἐν στήθεσσι νόον καὶ ἐπίφρονα βουλήν.


いかにもまずカオスが生じ、ほどなくして
広き胸を持つガイア、雪に覆われたオリュムポス山の頂に住まう
あらゆる不死なるものたちの永久に揺るぎない場所と、
広い大地の最深部 真っ暗に霞みがかったタルタロス、
そしてエロースが生じたが、彼[エロース]は不死なる神々の中で最も美しく、
あらゆる神々とあらゆる人間たちの手足をくつろがせ、
胸の中の知性と思慮深い意志とを打ちひしぐ。

(ヘーシオドス『Θεογονία(テオゴニアー)』の一一六~一二二行より)

近年ではカオス(Chaos)は「混沌」と訳されることが多いが、原義は《大口を開く》を意味するインド・ヨーロッパ祖語の語根ghnやghenに由来する。したがってカオスは世界にポッカリとあいた「穴っぽこ」である。世界に「穴っぽこ」があいたので、その真ん中に我々が暮らす「大地」ができあがり、底の方には「奈落」ができあがった。それから生殖活動の原動力になる「性愛」が誕生した。これがヘーシオドスの語った世界の始まりなのである。

後代のギリシア人たちはカオスを「混沌」と解釈して哲学的な意味を付加していく。すなわち、カオスを未分化なものが混ざり合った混沌とした状態と解釈し、さまざまな要素が交じり合った「混沌」の中から「大地」や「天空」などのさまざまな要素が分化して、世界が形成されていくと考えたのである。これは、最初からカオスの中にあらゆる要素が未分化のまんま内在していて、それがだんだんと分かれていくという考え方である。この考え方はやがて中世ヨーロッパの錬金術などに取り入れられ、もし今ある物質を再び未分化な状態、すなわち「第一原質(プリマ・マテリア)」にまで戻すことができるならば、物質を自由に作り変えることができるのではないかという発想に繋がっていく。そうなれば、当然、卑金属から貴金属をつくることができる。けれども、カオスが「混沌」として認識されるようになるのは、この世が地、水、火、風の四大元素から構成されているというエムペドクレースらの四大元素説が唱えられるようになった以降のことで、ストア派による思想の影響が大きい。ヘーシオドスの時代のカオスは、まだ単なる《穴っぽこ》という意味しか持たなかった。

さて、カオスは単独で夜の女神ニュクスと暗闇の神エレボスをうんでいる。「夜」と「暗闇」が交わって昼の女神ヘーメラーと天上の輝きアイテールをうむ。

ἐκ Χάεος δ' Ἔρεβός τε μέλαινά τε Νὺξ ἐγένοντο:
Νυκτὸς δ' αὖτ' Αἰθήρ τε καὶ Ἡμέρη ἐξεγένοντο,
οὓς τέκε κυσαμένη Ἐρέβει φιλότητι μιγεῖσα.


さてカオスからエレボスとニュクスが誕生した。
そしてまたニュクスからアイテールとヘーメラーが誕生したが、
彼女[ニュクス]がエレボスの愛情を受けて彼らを身ごもり世界にもたらしたのだ。

(ヘーシオドス『Θεογονία(テオゴニアー)』一二三~一二五行より)

餓鬼(ガキ)

[仏教][日本伝承]
 餓鬼(ガキ)【日本語】

六道の一つである餓鬼道に生まれ変わった者のこと。餓鬼道とは生前に贅沢していた者が行く場所とされ、餓鬼(ガキ)は常に飢えと渇きに苛まれる。食べ物や飲み物に触れようとすると火に変わってしまうため、いつまでも満たされない。腹を膨らませた痩せ細った姿で描かれる。ときおり人間界に出没して食べ物を求めるという。ここから転じてとりついて空腹をもたらす妖怪のことを指すときもある。

カシマさん

[都市伝説]  カシマさん、カシマレイコ、仮死魔霊子(カシマレイコ)

カシマさんは日本に伝わる都市伝説の一種で、非常に広く知られている。身体の一部が欠けた人間の姿で出現し、女性であることが多いが、日本兵や郵便局員など男性の姿で現われることもある。カシマさん、あるいはカシマレイコは不幸な死に方をしていて、誰かからその話を聞いた人間のもとを訪れる。そして「手いるか?」「脚いるか?」などの問いかけをしてくる。「今使っています」「必要です」などと決まった受け答えをしなければならない。最後には「その話は誰から聞いた?」と訊いてくるので「カシマさんから聞いた」と答えればいい。これらの問いかけに正しく答えないと手や足を持っていかれて死んでしまうという。同じ都市伝説の口裂け女(クチサケオンナ)も、その正体はカシマレイコだとされる場合がある。

片輪車(カタワグルマ)

[日本伝承][妖怪]
 片輪車(カタワグルマ)【日本語】

片輪車(カタワグルマ)は炎に包まれた片輪の牛車に乗った美しい女の妖怪で、片輪の牛車は牽く者もいないのに町中を走り回るという。夜な夜な出現し、姿を見た者に祟りをもたらした。『諸国里人談』『譚海』では、ある女が好奇心から片輪車の姿を見ようと戸の隙間から覗き見をしていると、その間に寝床にいた子供が奪われてしまったという。明くる日に悲しみを歌に詠んで戸口に貼っておいたら、片輪車は子供を返してくれたという。また、燃える車輪に髭もじゃの入道の顔がついているだけの片輪車も知られており、『諸国百物語』に登場する。こちらの入道の片輪車は子供を引き裂いて殺してしまう非常に残虐な妖怪である。鳥山石燕はこの二つの片輪車を区別して、後者の方は輪入道(ワニュウドウ)として『今昔画図続百鬼』で紹介している。

[もっと読む]

河童(カッパ)

[日本伝承][妖怪]
 河童(カッパ)【日本語】

日本各地の河や湖沼などに伝わる水の妖怪。珍しい例では、海に棲む河童もいる。日本では非常にポピュラ。猿猴(エンコウ)やカブソなどのように、猿や川獺などの動物に類する別名や、あるいはメドチなどのような水神に由来する名前、そしてガワッパ、川太郎など、川の子供を意味する名前がある。子供くらいの背丈で、散切り頭の上に皿を持っている。指には水掻きがあり、背中には甲羅を持つものもいる。くちばしのような口をしている河童もいる。頭の上の皿の水がなくなると力が抜けるとか死ぬなどと言われる。両腕が繋がっていて、強く引っ張ると抜けるという特徴を持つ。川に引き込んで肛門にあるとされる尻子玉を抜くとされた。よくいたずらをし、また、相撲を挑んでくる。胡瓜が大好物である。

カトブレパス

[古代ローマ伝承]
 Catoblepas(カトブレパス)【ラテン語】
(※ καταβλέπω(カタブレポー)《下を見る》【古典ギリシア語】に由来する)

プリニウスの『博物誌』に紹介されている怪物。エティオピアに棲むとされる。名前は《下を見る者》という意味のラテン語。バシリスクなどと同様に、その視線には、見たものを殺す能力が備わっている。ギュスターヴ・フローベールの『聖アントワーヌの誘惑(La Tentation de Saint Antoine)』にも登場し、黒いバッファローのような怪物として描写されている。細長い腸のような首の先に豚のような頭がついていて、頭を持ち上げることができない。お陰で多くの人が死を免れているのである。

ガネーシャ

[インド神話]
 गणेश〔gaṇeśa〕(ガネーシャ)【サンスクリット】

ヒンドゥー教に登場する神さま。人間の身体にゾウの頭を持つ。四本の腕があり、でっぷりした腹をしていて、牙の片方は欠けている。乗り物(ヴァーハナ)は鼠のムーシカである。シヴァ神の妻であるパールヴァティから生まれた神で、もともとは人間の姿をしていた。ところがパールヴァティが入浴中にその見張りをしていたところに彼女の夫であるシヴァ神が戻ってきて、侵入を拒んだだめに首を斬られた。パールヴァティの子であることを知ったシヴァは慌てて代わりの首を探し、ゾウの首があてがわれて今の姿になっているという。商売繁盛の神として現在でもインドでは大人気な神さまである。

ガブリエル

[ユダヤ教][キリスト教][イスラーム][天使]
 גַברִיאֵל(ガヴリーエール)【ヘブライ語】
 Gabriel(ガブリエル)【英語】
 جِبرِيل(ジブリール)【アラビア語】

キリスト教の四大天使の一人で、ユダヤ教、イスラームでも重要な天使として扱われている。しばしば神の使者として聖書などに登場し、神の言葉を人々に伝える。聖母マリアに受胎告知をした天使としても知られ、女性の姿で描かれることも多い。

窮奇(カマイタチ)

[日本伝承][妖怪]
 窮奇、鎌鼬(カマイタチ)【日本語】
(※ もともとは「構え太刀」に由来する?)

カマイタチは漢字で窮奇、鎌鼬などと書くが、もともとは「構え太刀」に由来すると考えられている。前脚に鎌のような鋭い爪を持った獣の妖怪で、旋風に乗って空中を飛び回り、姿を見せることなく、一瞬のうちに太腿などをばっさりと切り裂く。けれども切り裂かれた傷は痛みもなければ血も出ないという。飛騨などの別の伝承によれば、カマイタチは三人組の悪い神さまなのだともいう。一人目が人を倒し、二人目が切り裂き、そして三人目が薬を塗るのである。

ガミジン

[悪魔学]
 Gamigin(ガミジン)、Gamygyn(ガミュギュン)、Samigina(サミジナ)

ガミジン、あるいはガミギュン、サミジナはソロモン王が使役した七二匹の悪霊の一匹。小馬やロバの姿で出現する。降霊術を得意とする悪霊とされていて、罪を犯して死んだ者の魂を呼び出してさまざまな取引を行なうことができる。地獄では侯爵で、三〇の悪霊の軍団を率いている。

ガミジンの紋章(シジル)(4.) SAMIGINA, or GAMIGIN. - The Fourth Spirit is Samigina, a Great Marquis. He appeareth in the form of a little Horse or Ass, and then into Human shape doth he change himself at the request of the Master. He speaketh with a hoarse voice. He ruleth over 30 Legions of Inferiors. He teaches all Liberal Sciences, and giveth account of Dead Souls that died in sin. And his Seal is this, which is to be worn before the Magician when he is Invocator, etc.

(4)サミジナ、あるいはガミジン 四番目の悪霊はサミジナで、偉大なる侯爵である。彼は小馬、あるいはロバの姿で出現し、それから術者の要求によって人間の姿に変身する。しゃがれた声で喋る。三〇の地獄の軍団を支配している。彼はあらゆる教養学を教え、罪を犯して死んだ亡者の魂と取引する。これが彼の紋章であり、術者は召喚するときに身につけなければならない。

(メイザース&クロウリィ『The Lesser Key of Solomon, GOETIA』より)

カムペー

[ギリシア・ローマ神話]
 Κάμπη(カムペー)【古典ギリシア語】

ギリシア・ローマ神話に登場する女の怪物。クロノスが冥府タルタロスにキュクロープスとヘカトンケイルを放り込んだときに、その番人としてあてがわれた。ゼウスたちオリュムポスの神々は、クロノス率いるティーターン族と戦ったときに、冥府に投げ込まれた彼らを味方にすれば勝利できるというガイアの予言を受けて、この怪物カムペーを殺し、キュクロープス、ヘカトンケイルらを救い出した。

烏天狗(カラステング)

[日本伝承]
 烏天狗(カラステング)、小天狗(ショウテング)【日本語】

烏天狗(カラステング)は天狗(テング)の一種。天狗には二種類いて、鼻の長い天狗と、それから烏のようなくちばしと翼を持つ天狗とがいる。烏天狗は後者の天狗を言う。大天狗(ダイテング)という神通力に長けた強力な天狗たちの部下で、小天狗(ショウテング)と呼ばれることもある。天狗の仲間たちの中では下っ端にあたる。山伏の格好に高下駄を履いた姿をしていて、人間にとり憑いたり、僧侶を堕落させようと暗躍する。

カラドリウス

[中世ヨーロッパ]
 Caladrius(カラドリウス)

中世ヨーロッパで、人間の病を診断し、ときに病気を吸い取って治すと信じられていた霊鳥。白い鳥の姿をしていて、病人の部屋にやってきてベッドに止まり、手遅れだと判断するとそっぽを向いて無視するが、助かる見込みがあると判断するとくちばしから病気を吸い取ってしまったという。その後、空高く舞い上がると病気を大気中に吐き出したとされる。

カリアッハ・ヴェーラ

[イギリス伝承]
 Cailleach Bheur(カリアッハ・ヴェーラ)【ゲール語】

カリアッハ・ヴェーラはスコットランドやアイルランドに伝わる冬の魔女。冬をもたらす妖精で、青く醜い顔をした老女の姿をしている。おそらくは古いケルトの信仰に関係がある。秋の終わり頃になると杖を片手にやってくる。触れた木々の葉は落ちてしまうという。冬の弱い太陽の象徴ともされ、冬の間に空を薄暗くしたり、雪を運んだりするのも彼女の仕業だという。春がやってきて五月祭の頃になると、カリアッハ・ヴェーラは石になってしまう。しかし秋になってハロウィーンになると再び老婆の姿になって冬をもたらす。

カリス

[ギリシア・ローマ神話]
 Χάρις(カリス)、pl. Χάριτες(カリテス)【古典ギリシア語】

ギリシア・ローマ神話に登場する女神たち。「優雅女神」などと邦訳される。ゼウスとエウリュノメー、あるいはゼウスとヘーラーの娘たちとされ、若々しく美しい女性の姿で描かれる。春の芽栄えや息吹の象徴であるらしい。オリュムポス山に住まい、神々に従っている。宴を開いて、歌ったり舞ったりする。

カリュブディス

[ギリシア・ローマ神話]
 Χάρυβδις(カリュブディス)【古典ギリシア語】

ギリシア・ローマ神話に登場する女性の怪物。大地の女神ガイアと海神ポセイドーンの娘で非常に大食らいだった。あるとき、英雄ヘーラクレースが十二の難業の一つでゲーリューオーンの牛を追っていたときに、その牛を盗んで食べてしまった。そのため、ゼウスによって雷霆で打たれ、海へと落とされ、怪物になった。シチリア島とイタリアの間にあるメッシナ海峡に棲んでいて、海底で一日に三回、大量の海水を呑み込み、吐き出しては大渦を引き起こし、そこを行き来する船を難破させた。メッシナ海峡のカリュブディスがいる岸の対岸にはスキュラという別の怪物がいて乗組員をさらって喰らうとされていたため、メッシナ海峡は船乗りたちにとっては有名な難所の一つだった。

カルコータカ

[インド神話]
 कर्कोटक〔Karkoṭaka〕(カルコータカ)【サンスクリット】

インド神話に登場するナーガの王の一人で、『マハーバーラタ』の「ナラ王の物語」に登場する。ナラ王が悪魔カリにとり憑かれて放蕩に耽るようになったときに、カルコータカが王に噛みついたという。カルコータカの毒はそのまんま悪魔カリにだけ作用してナラ王は無事だった。ナーガ一族の始祖であるカーリヤーの兄弟にあたる。

ガルダ

[インド神話]
 गरुड〔Garuḍa〕(ガルダ)【サンスクリット】

インド神話に登場する鳥の怪物。人間の胴体に鷲の頭、くちばし、翼、脚、鉤爪を持つ。ナーガたちに不死の飲料アムリタを手に入れてくるように頼まれ、ヴィシュヌやインドラらと戦った。その力を評価したヴィシュヌからは永遠の命を、インドラからは神々との永遠の友情を得た。その後、ヴィシュヌの乗り物(ヴァーハナ)になった。仏教には「迦楼羅、迦楼罗(カルラ)」と音訳されて取り込まれた。

ガルム

[北欧神話]
 Garmr(ガルム)【古ノルド語】

北欧神話に登場する地獄の番犬。ヘルが治める死者の国ニヴルヘイム(ニヴルヘル)の入り口にあるグニパヘッリルという洞窟に鎖で繋がれている。巨大な狼の姿をしており、胸元は死者たちの血で真っ赤に染まっているという。しばしば北欧最強の犬とされる。ラグナレクのときには解放され、地上に攻め上がってくるが、ティール神と相討ちになるという。

ガルラ

[シュメール・アッカド神話]
 ガルラ(シュメール語)、ガルルー(アッカド語)

ガルラ、あるいはガルルーはシュメール・アッカド神話に登場する冥界の悪霊。エレシュキガルとともに冥界に棲み、死者を冥界へと運んだようだ。「イナンナの冥界降り」の中にも登場し、イナンナとともに地上に赴き、彼女の身代わりとして冥界に送られる人間を探し、冥界に連れて行こうとした。結局、選ばれたのはイナンナの夫のドゥムジであったが、ドゥムジが方々逃げ回ったが、ガルラは執拗にドゥムジを追いかけ、冥界へと連れて行った。槍や葦の筆のように細い身体をしていて、棒を持ち、腰からは武器を下げていたという。

カローン

[ギリシア・ローマ神話]
 Χάρων(カローン)【古典ギリシア語】

カローンは冥府ハーデースの河の渡し守をしている老人。古代ギリシア人も日本人と同様に、あの世とこの世を隔てる三途の川のようなものがあると考えていた。カローンはぼろをまとった長いひげをはやした老人で想像され、渡し賃として一オロボス(古代ギリシアの貨幣)を要求した。そのため、古代ギリシアでは死者の口の中に一オロボス銅貨を入れて埋葬する風習があった。日本でも、三途の川を渡る際には一文銭が必要になるとされていたので、同様のものであろう。カローンは船を漕がない。漕ぐのは死者本人で、カローンは船の舳先で方角だけを操った。

川姫(カワヒメ)

[日本伝承][妖怪]
 川姫(カワヒメ)【日本語】

川姫は福岡県に伝わる川の精霊の一種で、若い男性が川辺にやってくると現われ、その美しさで魅了してくる。魅了された若者は川姫に精気を吸い取られてしまう。そのため、川姫が出現したら、下を向いて無視を決め込まなければならないという。若い男性を川に引き込む精霊の伝承は世界各地に伝わっていて、たとえば、北海道の水の精霊ルルコシンプ、ロシアのルサルカ、ヨーロッパのニクシーなど枚挙にいとまがない。

ガンコナー

[アイルランド伝承][妖精]
 Ganconer(ガンコナー)【ゲール語】

アイルランド伝承に登場し、次から次へと女性を口説く男性の妖精。パイプをくわえて人里離れた場所に出没、女性たちに言い寄る。若い魅力的な姿をしたガンコナーに、女性たちは決まって恋心を抱くが、一方のガンコナーはそのままどこかへ消えてしまう。そのため、女性たちはガンコナーを恋焦がれて衰弱し、そのまま死んでしまうのだという。ガンコナーは、本当は老人の姿をした妖精で、魔力で女性の心を掴むのだとも言われている。

ガンダルヴァ

[インド神話]
 गन्धर्व 〔Gandharva〕(ガンダルヴァ)【サンスクリット】

ガンダルヴァはインド神話に登場する山野の精霊。植物を司る。仏教に取り込まれて「乾闥婆(けんだつば)」と音訳された。上半身は人間、下半身は鳥の姿をしていて、背中には翼をはやした一族で、インドラ(帝釈天)に仕え、天界で音楽を奏でる役目を負っている。水の精霊アプサラスたちを妻にしている。

カンチキ

[日本伝承][妖怪]
 カンチキ【日本語】

山梨県に伝わる河童の仲間。山梨県南東にある南都留郡道志村の淵に棲む。河童にもいろいろな種類のものがいるが、カンチキは背中に亀の甲羅を持ち、鳥のくちばしのような口を持ったタイプの河童で顔色は青黒いという。残虐な面が強調されることの多い妖怪で、肛門から細い腕を突っ込んで内臓を引っ張り出して喰らうとか、ものすごい力で川の中に引き込もうとするなどと言われる。また、不注意で水に落ちてしまった人がいたときに、慌てて助け出そうとしても、カンチキはあっという間に尻を抜いているという。もし、カンチキに川に引き込まれそうになったらカンチキに逆らって引っ張り合うのではなく、逆に押し返してやると簡単にひっくり返って尻餅をつくと言われている。

加牟波理入道(カンバリニュウドウ)

[日本伝承][妖怪]
 加牟波理入道、雁婆理入道、眼張入道(カンバリニュウドウ)【日本語】

加牟波理入道(カンバリニュウドウ)は江戸時代に信じられていた便所の妖怪。厠神(カワヤシン)の一種。便所に現われ、便所の不安を取り除くとされる。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』には口から鳥を吐き出している入道が便所の脇に立っている絵が描かれている。おそらくこの鳥はホトトギスである。大晦日の夜に便所に入って「カンバリニュウドウ、ホトトギス」と唱えると一年は妖怪に会わなくていいなどと信じられた。便所とホトトギスが結びつけられたのは、中国の便所の神「郭登」と郭公(カッコウ)からの連想で、江戸時代にはカッコウとホトトギスが混同されたことによるとする説もあるが、すでに中国で便所とホトトギスの結びつけが見られるという。

加牟波理入道
大晦日の夜、厠にゆきて「かんばり入道 郭公」と唱ふれば、妖怪を見ざるよし、世俗のしる所也。もろこしにては厠神名を郭登といへり。これ遊天飛騎大殺将軍とて、人に禍福をあたふと云。郭公郭登同日の談なるべし。
(鳥山石燕『今昔画図続百鬼』「晦」より)

カンヘル

[アステカ伝承]
 Canhel(カンヘル)

カンヘルは南米でのキリスト教の布教活動の過程で、アステカ族の伝承と融合する形で登場したとされる竜の一族のこと。キリスト教の神エホヴァが最初のカンヘルであるセルピヌスを創り、そのセルピヌスがその他のカンヘルたちとともに世界を創造したとされる。また、四匹のカンヘルたちが東西南北のそれぞれを守護しているとされる。