ユキノドウ

[日本の妖怪]
 ユキノドウ,雪ノドウ(ユキノドウ)【日本語】

岐阜県に伝わる雪の精。本来は目に見えないが、女や雪玉の形で出現する。「水をくれ」と現れるが、水をやると殺される。熱いお茶を出すか、呪文を唱えて退散させる。

熱ーいお茶と呪文で撃退する雪の精!

岐阜県の揖斐郡坂内村川上、藤橋村でいう雪の妖怪で、雪女とは異なり、本来は目に見えないものだという。昼夜を問わずに、女の人に化けたり、あるいは雪玉の形になって出現するという。山小屋などに現れて「水をくれ」と言うが、言われたままに水をやると殺されてしまうという。代わりに熱いお茶を出すか、あるいは撃退のための呪文を唱えると退散するという。撃退のための呪文というのは「サキクロモジニアトボーシ、アメウジカワノヤツユバエ、シメツケハイタラ、イカナルモノモ、カノウマイ1)」というもので、高橋丈太郎『山と人と生活』によれば、これは「輪かんじき」の製法に関係するという。「輪かんじき」というのは、深い雪の中でもちゃんと歩けるように靴の上から装着するもので、この地方では前後を別々の木でこしらえるといい、その習慣から出た呪文のようである。雪山に対抗するものとして、これが呪文に用いられるようになったのだろう。 妖怪と遭遇したときに、してはいけない行為と撃退法がある辺り、現代の都市伝説に通じるものがある。

1) 先クロモジ(くすのき)に後ボーシ(けやき)、あめうじがわ(黄牛の皮)の八つ結ばえ、締めつけ履いたら、如何なるものも、敵うまい:足の先の方を楠で、後ろ側を欅でつくって、牛の皮で八つに結んだこの和かんじきを、こうやってきつく締めつけて履いたら、何も恐いものはない、というような意味の呪文だと思われる。

《参考文献》