夜泣き石(ヨナキイシ)
[日本の妖怪]
夜泣き石(ヨナキイシ)【日本語】
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夜泣き石と呼ばれる石の伝承は日本全国に広がっているが、実は二種類ある。ひとつは声をあげる怪石で、怨念などが石に乗り移って無念の泣き声をあげる。もうひとつは、その石に拝むと子供の夜泣きが治るという石である。
声をあげる石の伝承の中でも、小夜の中山夜泣き石が非常に有名なので、紹介したい。場所は遠州(静岡県)東海道の金谷宿と日坂宿の間。そこに小夜の中山峠があった。その昔、身重だったお石という女が小夜の中山峠に差しかかった辺りで、彼女は急な陣痛に襲われる。そこに旅の男がやってきて、優しく快方してくれた。ところがその男、女が持っていた金に目が眩んで、その女を斬り殺して金を奪って逃げ出してしまった。それからというもの、その女の怨みが近くにあった石にとり憑いて、夜ごとに悲しい泣き声をあげるようになったという。
そのときの赤ん坊は観世音菩薩の助けを借りて無事にうまれ、近くの寺で育てられ、やがて成人して盗人に復讐したという。今でも小夜の中山久延寺には、このときの石が残されている。
ほかにも、各地に夜泣き石が残されている。長野県飯田市には水難で亡くなった幼児の霊がとり憑いた夜泣き石の伝承がある。1715年の未年、飯田下伊那地方に豪雨が襲い、河川が氾濫、土石流災害をもたらしたという。そのときに、大きな石の下敷きになって幼児が亡くなった。それ以降、子供の泣き声が聞えてくるようになり、この石の上にお地蔵様を祀ったら、泣き声がやんだという。大阪府交野市の源氏の滝の脇にも夜泣き石がある。交野の里に源氏姫という美しい姫と、弟同然にかわいがってきた梅千代という可愛らしい少年が住んでいた。あるとき、彼女たちは山賊に襲われる。そのショックで梅千代の方は死んでしまった。山賊の頭領は女だったが、二人を見ると泣き始めた。けれども、源氏姫は梅千代の仇と女山賊を殺してしまった。 京都市の八坂神社にも、夜になると泣き出す石がある。 京都舞鶴の夜泣き石は福岩と呼ばれ、鶏のような声を発し、この声を聞いた人間には幸福が舞い込むとされた。