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家鳴り(ヤナリ)

[日本の妖怪]
 家鳴り〔yanari〕(ヤナリ)【日本語】
 鳴屋(ヤナリ)
〔「家鳴り(イエナリ)」とも表記される(「現象」を指す場合にはこちらを用いることが多い)〕

家がガタガタと震えたり、ミシミシと軋んだりする現象。その正体は小鬼だとされる場合があり、小鬼のことも家鳴りという。『太平百物語』では熊の祟りだった。

ガタガタと家が震え、軋む!

家鳴りとは、家や家具が揺れる現象のこと。西洋のポルターガイストに似ている。その日本ヴァージョンである。鳥山石燕が「鳴屋(やなり)」と表記して『画図百鬼夜行』で紹介している。たくさんの小さな鬼が屋敷を揺らしている絵が描かれているだけで、特に解説はない。鳥山石燕は創作妖怪が多いことで知られるが、初期に書かれた『画図百鬼夜行』は過去の怪談本や民間伝承を選んで描かれている。したがって、おそらく家鳴りも巷で知られた妖怪だったのだろう。何でもないのに突然、家が軋むことがあるが、それを妖怪の仕業だと考えたものだと思われる。

小泉八雲も「ヤナリ」について言及している。もともとは化け物が動かす振動の音を「ヤナリ」と言っていたもので、眼には見えないという。その正体である振動者も「ヤナリ」と呼ぶようだ。特に原因がないのに、夜中に家が軋みだすと、人々は超自然的なものが外から家を揺り動かすと想像していたのだろう、と書いている。この姿なき「ヤナリ」に、鳥山石燕は小鬼の姿を与えたのかもしれない。

そもそも、木造の建物や家具というのは、ときに軋むような音、割れるような音を出すものだ。木材が気温や湿度の変化に応じて伸び縮みするために起こる現象なのだが、これが意外と大きな音を立てることもある。これは現在では「家鳴り」と呼ばれる。おそらく西洋のラップ現象や家鳴りは、この現象から連想されたものなのだろう。地下に水脈があって、その音や振動が変な風に建物と共振すると、突然、家がガタガタと震えだすこともある。こういう現象も、この妖怪の誕生に寄与しているのかもしれない。

江戸時代の怪談集『太平百物語』にも家鳴りが登場する。江戸時代、但馬国(京都府)には有名な化け物屋敷があったという。浪人であった木戸刑部という人物が仲間と肝試しにその屋敷に泊り込んだ。案の定、夜中になって家が揺れ始めた。地震かと思って外に飛び出すと、震えているのは屋敷だけだった。そこでやってきた智仙という僧侶に相談し、一緒に泊まることになった。またしても家が揺れ始める。智仙はじぃっと畳を見つめると、もっとも激しく揺れるところを小刀で突き刺した。すると不思議なことに、ぴたりと揺れがおさまった。翌朝、よく調べてみると、小刀の先には血がついている。畳をめくって床下を調べると、そこに墓標があった。近所の人の話では、以前この屋敷に住んでいた男が、付近を荒らし回る熊を退治したという。男は祟りを恐れて熊の墓標を立てたが、結局、祟られて死んだのだった。

《参考文献》