刑天(シンティエン)

[中国の妖怪]
 刑天〔xíng-tiān〕《頭を切り落とす》(シン・ティエン)【中国語】
 形天(シン・ティエン)

中国神話に登場する頭のない巨人。乳首の部分に目、へその部分に口があって、楯と斧とを持って暴れまわる。

首を斬られてもなお戦う不屈の戦士

刑天(シンティエン)は中国神話に登場する頭のない巨人。その代わりに乳首の部分に目、へその部分に口がある。日本では刑天(けいてん)として知られる。もともとは普通の姿をした巨人で、炎帝神農の配下だったという。ところが黄帝が勢力を伸ばして炎帝を打ち破る。けれども刑天はただひとり、黄帝に挑戦したという。頭を切り落とされて、常羊山に埋葬されるも、それでも戦うことを諦めず、乳首を目に、へそを口にして生き延びて、楯と斧とを持って頭のないまんまで暴れ続けたという。

『山海経』「海外西経」にも「形天」という表記で登場している。形天は奇肱国において天帝と神の座を巡って争ったという。

形天與帝爭神,帝斷其首,葬之常羊之山,乃以乳為目,以臍為口,操干戚以舞。

『山海經』「海外西經」より

刑天というのは《頭を切り落とす》という意味だという。ギリシアにも似たような怪物が伝わっている。《首なし》という意味のἈκέφαλος(アケファロス)という怪物で、姿はほとんど刑天と同じだ。

キャロル・ローズは刑天が活躍したのを「牧野の戦い」としているが、これは殷の紂王と周の武王の戦いで、炎帝と黄帝の戦いではない。そのような伝説もあるのだろうか。どうも聞いたことがない。キャロル・ローズによれば、失った頭を求めて低木地帯を彷徨う不運の怪物で人間を襲うとある。『太平広記』に登場しているらしい(未確認)。

《参考文献》