ヴァッサゴ
[悪魔]
Vassago(ヴァッサゴ)
ソロモン王が使役した72人の悪霊の1人。過去と未来を明らかにするとともに、隠されたもの、失われたものを見つけ出す。『レメゲトン』でしか言及されない悪霊で、アガレスと同質のものらしい。
■ 謎めいた悪霊はアガレスの影か?
ヴァッサゴはソロモン王が使役したとされる72人の悪霊のうちの1人で、魔術書『レメゲトン(Lemegeton)』に紹介されている。『レメゲトン』というのはソロモン王が書いた魔術書という触れ込みで広まったもので、少なくとも17世紀初頭までは遡ることができる代物だという。おそらく16世紀のさまざまな文献をもとにつくられたものだろう。ヴァッサゴが載っているのは、その中の第一部「ゲーティア(Goetia)」。ここにはソロモン王が使役したという72人の悪霊たちの姿や性格、能力、召喚する際の魔方陣や注意点などが書かれている。ヴァッサゴに関する部分を引用してみたい。
(3.) VASSAGO. - The Third Spirit is a Mighty Prince, being of the same nature as Agares. He is called Vassago. This Spirit is of a Good Nature, and his office is to declare things Past and to Come, and to discover all things Hid or Lost. And he governeth 26 Legions of Spirits, and this is his Seal.
(3)ヴァッサゴ:3番目の悪霊は強力な王子で、アガレスと同質のものであり、ヴァッサゴと呼ばれている。この悪霊はいい性格をしていて、その職能は過去と未来を明らかにすること、およびあらゆる隠されたもの、失われたものを見つけることである。26の悪霊の軍団を治めている。これが彼の紋章である。
(Mathers & Crowley『GOETIA: The Lesser Key of Solomon the King』より)
引用した『レメゲトン』は魔術師メイザース(Samuel Liddel "Macgregor" Mathers)とクロウリー(Aleister Crowley)が『ゲーティア:ソロモン王の小さな鍵(GOETIA: The Lesser Key of Solomon the King)』として翻訳・編集したもの1)。
『レメゲトン』に登場する悪霊たちはしばしばほかの魔術書に登場する。けれども、ヴァッサゴは『レメゲトン』でしか言及されない。姿に関する言及もないし、職能もほかの悪霊たちが持っているものと大差ない。「アガレスと同質のもの」と明記されているように、アガレスの別の側面なのだとする人もいるし、また、アガレスと同じような姿、すなわち、ワニにまたがった老人の姿で出現するのだと説明する人もいる。
草野巧はその姿を「痩せ衰えて骸骨のようになった老人の姿」としていて、「大きな鰐にまたがり、烏を供に出現する」としている。さらに「盲目」とも説明している。「淫らな悪徳や女性の秘密に詳し(い)」らしく、そのために術者によって呼び出されることが多いとしている。これらの出典はよく分からないが、もしかしたらTRPG『DragonQuest』の設定が混ざり込んでいるのかもしれない。
1) ほかにもオカルト研究者のピーターソン(Joseph H. Peterson)が翻訳してくれている。ウェブサイト「ファンタジィ事典」ではピーターソン版も併せて参照している。
《参考文献》
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
- 『GOETIA: The Lesser Key of Solomon the King』(訳:Samuel Liddel "Macgregor" Mathers,編:Aleister Crowley,1904年)