ユニコーン

[ヨーロッパ伝承]
 Unicorn(ユニコーン)《一本角》【英語】
 Μονόκερως(モノケロス)《一本角》【古典ギリシア語】
 Unicornus(ユニコルヌス)《一本角》【ラテン語】

一本の角をはやした獰猛な怪物?!

ユニコーンは額から一本の角をはやした美しい白馬の怪物である。日本では「一角獣」などと訳される。聖獣として幻想的な姿で想像されることが多いが、初期の頃は現在とは似つかぬ怖ろしい怪物で、古代ローマには、非常に獰猛で残酷な猛獣として描かれることが多かった。プリニウスの『博物誌』によれば、胴体はウマ、頭は雄シカ、脚はゾウ、尾はイノシシのようで、黒い角は一メートルほど。噛みついたり、脚で蹴っ飛ばしたり、額の角でゾウさえも一撃で刺し殺すとされていた。

クテーシアスの『インド誌』やアイリアノスの『動物の本性について』では一本の角をはやした野生のロバと説明されていて、角の持つ解毒作用について述べられている。ユニコーンの角でつくった盃で飲み物を飲んだ人間はさまざまな病にかからなくなるとされ、また、すでに飲んでしまった毒をも治癒してくれると説明されている。この角が持つ効果のために、ユニコーンを捕らえようとする人も多かったという。実際、中世ヨーロッパではイッカクの牙がユニコーンの角として売買されていた。ユニコーンは処女には心を許すとされ、乙女の膝枕で眠っているところを捕獲すればいいとされ、しばしば乙女とともに描かれた。

ユニコーンが気高く美しい聖獣になったのは中世以降で『フィシオロゴス』による影響が大きい。獰猛ながら汚れなき乙女の前では従順になるという、まさに中世の騎士道精神に相応しい獣とされるようになっていった。

《参考文献》

  • 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
  • 『シリーズ・ファンタジー百科 世界の妖精・妖怪事典』(著:キャロル・ローズ,監:松村一男,原書房,2003年〔1996年〕)
  • 『図説 幻獣辞典』(著:幻獣ドットコム,イラスト:Tomoe,幻冬舎コミックス,2008年)
  • 『モンスター・コレクション 改訂版』(著:安田均/グループSNE,富士見ドラゴンブック,1996年)
  • 『モンスター・コレクション ファンタジーRPGの世界』(著:安田均/グループSNE,富士見ドラゴンブック,1986年)
  • 『妖精事典』(編著:キャサリン・ブリッグズ,訳:平野敬一/井村君江/三宅忠明/吉田新一,冨山房,1992年〔1976年〕)