付紐小僧(ツケヒモコゾウ)
[日本の妖怪]
付紐小僧,付け紐小僧(ツケヒモコゾウ)
長野県の妖怪。着物の付紐(帯)がほどけたまんまの小僧の姿をした妖怪で、付紐を直してやろうと近づくと一晩中方々を歩き回らされる羽目になる。朝になれば解放されるという。
■ 親切心を出すと馬鹿を見る?
親切心を出すと馬鹿を見る妖怪を紹介しよう。それは付紐小僧(ツケヒモコゾウ)という妖怪で、長野県佐久市(かつての南佐久郡田口村)に伝わっているものだ。かつての田口村には「小豆とぎ屋敷」と呼ばれる屋敷があった。夜になると小豆とぎという妖怪が出没して、「小豆どしゃしゃか、人とってくやしょか、ショキショキ」などと物騒なことを言ったというが、夕方には別の妖怪が現れるという。それは7、8歳くらいの小僧の姿をした妖怪で、この小僧、着物の付け紐(胴の部分の細い帯)がほどけた状態で道を歩いて来るので、だらしなく見える。付け紐がほどけたままでは可哀想だ、と思って紐を結んでやろうとそばに近づいた親切な人は、途端に付紐小僧の誘いに引き込まれて、一晩中、あちらこちらを歩き回らされる羽目になる。さんざん歩き回った挙句に、気がついたときには明け方になっているというから堪らない。親切を仇で返す困った妖怪である。
付紐小僧と小豆とぎ(小豆洗い)との間に何か関連があるのかどうかはよく分からない。小豆とぎ屋敷周辺は妖怪にとって居心地がいい場所だったに過ぎない可能性もあるが、多田克己は付紐小僧を「小豆洗いの相棒」としていて、ほかにもクネユスリという秋田県の妖怪を紹介している。この妖怪も小豆洗いが出没するところに出現する妖怪である。クネユスリは一種のポルターガイストで、小豆洗いが出没すると、一緒に生け垣(クネ)をわさわさと揺らして人を驚かせるという。少なくとも、小豆洗いは他の妖怪と共存することを厭わない妖怪のようである。
《参考文献》
- 『日本妖怪大事典』(画:水木しげる,編著:村上健司,角川書店,2005年)
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
- 『Truth In Fantasy 9 幻想世界の住人たちⅣ <日本編>』(著:多田克己,新紀元社,1990年)