ちいちい袴(チイチイバカマ)

[日本の妖怪]
 ちいちい袴〔tîtîbakama〕(チイチイバカマ)
 ちいちい小袴(チイチイコバカマ),ちんちん小袴(チンチンコバカマ)

夜更けに現れる袴をつけた小さな男。唄って踊ってやがて消える。その正体は古くなった鉄漿つけ楊枝が化けたものだった。

鉄漿つけ楊枝が化けて出た?

ちいちい袴は新潟県佐渡島、岡山県、大分県に伝わる妖怪で、しばしば昔話に登場する。ちいちい小袴、あるいはちんちん小袴とも言う。佐渡島のある山家に老婆が一人で暮らしていた。ある日、夜更けにいつものように糸紡ぎをしていると、どこからか四角張った身体に袴をつけた小さな男で現れて「お婆さん淋しかろう。わしが踊ってみせましょう」と言って踊り始めた。「ちいちい袴に、木脇差を差して、こればあさん、ねんねんや♪」と唄ってやがて消えたという。老婆は気味悪く思って翌朝になって家中を調べてみると、縁の下から古くなった鉄漿つけ楊枝1)がでてきた。昔から、古い鉄漿つけ楊枝というのは焼き捨てるものだと言われていた。そこでこれを燃やしてしまうとそれ以降、怪しいことはなくなったという。古い道具が化けて出たということで、付喪神の一種なのだろう。

1)鉄漿(かね)つけ楊枝はお歯黒をするときに用いる楊枝のこと。

《参考文献》