太歳(タイスイ)

[中国の妖怪]
 太歳〔tài-suì〕(タイ・スイ)【中国語】

赤い肉の塊に数千の目がついている怪物。地中に棲み、木星の運行に合わせて地中を移動する。土木工事などで掘り返してしまった場合、すぐに埋め戻さないと周辺の人々は死に絶える。

木星の運行にあわせて地中を移動する肉の塊

太歳(タイスイ)は中国の妖怪。地中に棲むとされる怪物で、赤い菌のような肉の塊のような姿をしていて、身体中に数千の目がついているという。不気味。人の言葉を喋るともいう。もともと、太歳というのは木星のことだという。12年で天を一周する。地中に棲んでいる太歳はこの木星(太歳星)の運行に合わせて木星のいる方向へと地中を移動する。中国の占星術において、木星を観測することは非常に重要だったようで、その位置が狂うことを凶としたという。そこで占い師たちは木星の方角で土木工事をすると災難が起こると信じたらしい。

土木工事などで地中を掘ると、太歳が掘り出されることがある。するとその祟りからか、そこに住む一族が全員死に絶えてしまうなど不吉なことが起こる。だから太歳を掘り出したらすぐに土木工事を中断し、元の場所に埋め戻す必要があった。鞭で数百回打てば災難を逃れられるという言い伝えもあったようだが、これは実際には役に立たなかったようだ。というのも、晁良貞という人物は確かに鞭で数百回打って災難を逃れることができたが、それは彼の運勢が強かったから太歳が手出しできなかっただけで、同様に李が太歳を掘り出して鞭で打ったときには、彼の一族72人は1人を残して全滅してしまったという。

『太平広記』には太歳を掘り出した人物の話が載っている。寧州のある人物が、赤い菌のような肉の塊で数千の目を持つ怪物を掘り出した。家の者はこれが何であるか知らなかったため、大通りに行って、道行く人に尋ねて回った。すると通りすがりの僧侶が「これは太歳だからすぐに埋めなさい」と驚いたという。そこで元の場所に埋め戻したというが、とき既に遅かったのか、1年も経たないうちにその家の人は死に絶えたという。

《参考文献》