ロビン・グッドフェロー

[イギリスの妖精]
 Robin Goodfellow(ロビン・グッドフェロー)【英語】

イングランド伝承では有名ないたずら妖精。パックやホブゴブリンと同一視されることも多い。若者の上半身、ヤギの下半身を持ち、箒を持って描かれることが多い。さまざまなものに変身してからかったり、旅人を道に迷わせたりする。また、家事を手伝ってくれる性質もある。妖精王オーベロンの息子という説もある。

イングランドのいたずら妖精

ロビン・グッドフェローはイングランド伝承に登場するいたずら好きの妖精で、シェイクスピアなどのエリザベス朝の文学作品によく登場する。悪ふざけが大好きで、パックホブゴブリンなどと同一視されることも多い。さまざまなものに変身して、人間にいたずらを仕掛け、たとえば馬に変身して人間を連れ回したり、ウィル・オ・ザ・ウィスプのように火の玉になって夜道で人間を迷わせたりする。「Robin Goodfellow has been with you tonight(今晩はロビン・グッドフェローが一緒にいた)」という表現があって、これは《道に迷った》という意味で用いられる。ロビン・グッドフェローに道を迷わされないようにするため、帽子や外套を裏返しに着るという風習もあった。これは妖精パックなどにも用いられる方法である。夜中にやり残した家事を手伝ってくれることもあり、そういうときにはボウル一杯のクリームをお礼に与えるという風習もある。衣服を新調されると消えてしまうという性質もあって、これらの性質はホブゴブリンとそっくりである。

レジナルド・スコットもロビン・グッドフェローに言及していて、古くから無条件でその存在を信じられてきたというが、すでにスコットの時代(16世紀後半)には、それほど強く信じられなくなっていたようだ。それでも、それ以降、バラッドや劇などにたびたび登場し、人気を博していく。

ロビン・グッドフェローは、ギリシア・ローマ神話に登場する牧神パーンのような姿をしていることが多い。上半身が人間の男性、下半身がヤギの姿で、ヤギの耳と角とをはやしている。家事を手伝う象徴なのか、ほうきや脱穀用の竿などを持って描かれることが多いようだ。

妖精王オーベロンの息子?

シェイクスピアのいくつかの作品の中で、ロビン・グッドフェローは妖精王であるオーベロンの子供ということになっている。17世紀の小冊子『ロビン・グッドフェロー;悪ふざけと陽気ないたずら(The mad pranks and merry jests of Robin Goodfellow)』では、オベローン王と田舎娘との間にうまれた妖精と人間の合いの子、半妖精として描かれていて、最初は母親の家で人間として暮らしていた。母親はロビン・グッドフェローのいたずらに散々、振り回されていたようだ。6歳になって、ロビンは家を出た。彼は妖精の夢を見る。目覚めると彼の傍らには黄金の巻き物が置いてある。この巻き物は父親オーベロンからの贈り物で、何にでも変身できる方法が説明されていて、悪を挫き、善を助けるために用いるように指示されていた。ロビンは父親の言い付けを守り、妖精になったのだという。このストーリィは、英雄が神々の仲間に加わるという神話を踏襲したもので、英雄が弱体化したものだとする説もある。

《参考文献》