ピクシー
[イギリスの妖精]
Pixie,Pixy(ピクシー)
典型的なヨーロッパの小妖精。ボウル一杯のクリームなどで、家事などを手伝ってくれる。洋服を新調すると退散してしまう。悪戯も大好きで、夜道で人を迷わせたり、牛の乳を出なくしたり、朝まで馬を乗り回して疲れさせたりする。森の中で踊ることもある。取り換え子という悪さをすることでも知られる。
■ 典型的なヨーロッパの小妖精
ピクシーは典型的なイギリスの妖精だ。イングランド南西部に棲んでいて、身長20センチメートルと割りと小さく、群れをなしている。赤い髪の毛で、青白い顔をした子供の姿で、大きな口と上向きに反り上がった鼻、そして尖った耳をしている。多くの場合、緑色の服を着ていて、とんがり帽子をかぶっている。うろちょろしていても姿が見えず、頭の上に四つ葉のクローバーを載せると見えるようになるとも伝えられている。
家に憑くタイプのほかの妖精と同じように、貧しい人間や虐げられている人間のために仕事をしてくれる。御礼にボウル一杯のクリームを送る。あるいは収穫したリンゴの最後の1個を木の根元に残しておいてやるという。ただし、新しい洋服を贈ったりすると、たちまち退散してしまうので注意しなければならない。家の中の誰かが怠けていると、つねったり、追いかけたり、あるいはポルターガイストのような現象を起こして脅かしたりして懲らしめることがある。
ピクシーは悪戯が大好きだ。病気でもないのに牛の乳のでが悪くなるのはピクシーの仕業だという。勝手に牛の乳を搾ってしまうのだ。だから、牛の乳房にピクシーたちの苦手な塩水を塗れば退散するという。また、一晩中、馬を乗り回してぐるぐると輪を描く習性もある。「ガリトラップ(gallitrap)」と呼ばれる妖精の輪が残されていることがある。馬を疲れ果てさせ、翌朝になるとたてがみやシッポを奇妙に編んで返す。夜道を行く旅人を迷わせて疲れ果てさせるという悪さもする。これを「ピクシーの惑わし(pixy-led)」という。
普段は古代の塚やストーンサークル、洞穴などに隠れ住んでいるが、夜になると森の中などの空き地に出てきて踊りを踊る。そんなときの彼らに遭遇してしまうと、一緒に踊らされて時間の観念を失くしてしまうこともあるという。妖精に化かされないようにする方法があって、それは上着を裏返しに着ることである。そうすれば夜道を迷わされたり、踊りを踊らされたりしなくて棲む。
ピクシーの正体は、洗礼を受ける前に死んだ子供の霊魂だと信じる人もいる。また、もっとも性質の悪いことの1つに、人間の赤ん坊を盗んだり、取り換え子をしたりするということが知られている。サマセット州やデヴォン州では、ヴィクトリア朝の時代まで、子供をピクシーにさらわれないように赤ん坊をベビーベッドに縛りつけていたというから驚きだ。
《参考文献》
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
- 『シリーズ・ファンタジー百科 世界の妖精・妖怪事典』(著:キャロル・ローズ,監:松村一男,原書房,2003年〔1996年〕)