マーメイド

[イギリスの伝承]
 Mermaid(マーメイド)《海の乙女》【英語】
〔mere《海》(古英語)+maid《乙女》(古英語)〕

イギリスに伝わる女性の人魚。《海の乙女》を意味する。上半身が若く美しい女性、下半身が魚。男性の気を引き、近づいてきたところを水中に引きずり込む。また、歌声で魅了する。稀に好意的なマーメイドもいて、助けられたお礼に贈り物をくれることもある。

男性を魅了し、水中に引きずり込む美しい人魚

マーメイドはイギリスに伝わる女性の人魚のこと。古英語のmere《海》とmaid《乙女》に由来する。メールメイデン(meremaiden)と呼ばれることもある。マーメイドというと海に棲んでいるものと思われるかもしれないが、淡水、すなわち河や泉に棲むものもいる。上半身は若くて美しい女性の姿、下半身は魚の尾のような姿をしている。髪は金髪で、目は緑色。岸辺の岩などに腰かけて、鏡を片手に長い髪の毛を櫛で梳かしているところを目撃されることが多い。あるいは溺れている振りをすることもある。こうやって男性の気を引いて、近づいてきたところを水の中に引き込んでしまうといった悪さをすることもある。ギリシアのセイレーン同様に、彼女たちの歌声には水夫たちを死へと誘う魔力があるようだ。

マーメイドといえばアンデルセンの『人魚姫』のような人間に対して好意的なものを想像しがちだが、伝承に登場するマーメイドの場合、恐ろしい存在だ。彼女たちの出現は大抵の場合、不幸や災難を意味する。嵐の兆候としても知られる。そのため、船乗りたちは非常にマーメイドを恐れた。もちろん、好意的なマーメイドたちだっている。水の中に戻れなくなったマーメイドなどを助けてやると、お礼に病を治す薬草の作り方や治療法を教えてくれることがある。豪華な贈り物をくれたり、嵐を予告してくれることもあるという。

通常のマーメイドは水の世界で暮らしていて、マーマンと呼ばれる男性の人魚と結婚する。けれども、人間と結婚するマーメイドの伝承も残されている。手足に水掻きのある子孫を残すこともある。

たとえばゲルマンのニクシーやスカンディナビアのハヴリュー、アイルランドのメロウなど、マーメイドに類する民話・伝承は世界中に豊富に存在している。

《参考文献》