メドチ
[日本の妖怪]
メドチ【日本語】
東北地方、特に青森の河童。猿のような顔をした真っ黒い身体。女の子に化けて水中に誘い込んだり、溺れた子供の肛門から飛び出してきたりする。
■ 肛門からメドチが飛び出す!
メドチは東北地方、特に青森県に伝わっている河童の仲間である。河童の伝承は広く日本全国に残されているが、地方によってさまざまなバリエーションがある。メドチは猿のような顔をした真っ黒い身体の妖怪で、10歳くらいの子供の姿をしているという。通常、河童といえば頭の上に皿があることで有名だが、メドチの伝承では頭の皿については言及されない。相撲が好きだったり、腕を下に引っ張ると抜けたり、麻が苦手などの性質は通常の河童と同じである。とくにメドチは麻幹(おがら/麻の茎のこと)にとけてしまうともいわれている。
左甚五郎が、人の尻でも食えといって木屑を水に放したという伝説がある。八戸市櫛引では七日盆の日には馬をとるという。昔駒引に失敗し、もう取らぬと約束したが、生きていけないので滝の明神様にこの日だけと願って許されたからだという(川合勇太郎『ふるさとの伝説』)。下北半島の正津川の河童が悪戯をして困るのでショウズの婆さんに祈願して懲らしめてもらった。紫尻を嫌う。しかし一旦見こまれると逃れられず、友達や親戚に化けてきて必ず川に連れ込む。生まれつきの運命だという(中道寺『奥隅奇譚』)。津軽藩若党町の子が川で溺れた。水を吐かせようと手を尽くすと、腹のうちがグウグウとなり、たちまち肛門から長さ一尺六、七寸で体が平たく頭の大きなものが走り出て四辺を狂い回った。打ち殺そうとしたが、川に飛び込まれた(平尾魯遷『谷の響』巻五-七)。メドチ~水神の名残り
河童の仲間の名前の由来にはいろいろなものがあって、河童(カッパ)やガラッパのように河の子供というニュアンスの名前や、猿猴(エンコウ)とか川獺(カブソ)のように動物の名前に近いものなどさまざまであるが、メドチは水神系の名前に区分され、おそらく蛟(ミツチ)に由来する。ほかにも北海道のミンツチなどもこの系列に含まれる。日本には古来から水神信仰があって、蛇を水の神さまとして信仰していた。それが零落して河童になったのだとする説もある。その証拠に河童は相撲を好む。相撲といえば、かつては神事である。豊作を祈り、神が水の精霊を屈服させて水の供給を約束させるという一連の儀式を表現していて、そのために東西の猛者が身体をぶつけたのである。河童が好むとされるキュウリなどの夏野菜も、その初ものは水神に捧げられる大切な供物であった。河童にはそういう側面が強く残っている。
メドチ~水難事故の記憶
一方では水難事故の経験からうまれた伝承でもある。水の中に引き込んで尻子玉を抜くとか、肝を好んで喰らうといった恐ろしい河童の側面は明らかに水難事故の観察から来ている。水死者は腹にガスがたまって膨らんで肛門が開いてしまう。その水死体の姿から、河童に肝を食べられたとか、尻子玉を抜かれたという発想に繋がっていったものと思われる。
津軽藩若党町では川で溺れた子供がいて、水を吐かせようと手を尽くしていると、そのうち腹がグウグウと鳴り始め、肛門から長さが1尺6~7寸(50センチほど)の頭の大きな平たい姿をしたメドチが走り出てきて、周囲をのたうち回った。打ち殺そうとしたが、川に飛び込んで逃げてしまったという。また、十和田のメドチは女の子に化けて人を水中に誘い込んで溺れさせるという。このメドチは人間に子供をうませることもあるようだ。
メドチ~腕が抜ける
不思議なことに、河童の両腕が繋がっているとされることが多く、引っ張ると抜けるとされる。メドチもそうで、腕を下に引っ張ると抜けてしまうという。これは河童がもともと草人形だったからだと説明されている。たとえば奈良県の三笠山に春日大社を造営するときに、人手が足らなかったために藁束を十字に組んで人形をつくって働かせたという伝承がある。藁束は子供の姿になって働いたというが、工事が終わっていらなくなった人形は川に捨てられた。これが河童になったというのだ。そのため、藁人形のときと同様に、両腕はひとつに繋がっているというのだ。北海道のミンツチにも同様の伝承がある。アイヌ人たちは日本と貿易をしていたが、あるとき、日本の船に天然痘を流行らせる疱瘡神が乗っていた。そこでアイヌ人たちはこれに対抗するために神聖な蓬を十字に組んで草人形をつくって戦士として戦わせたという。このときに死んでしまった草人形がミンツチになったというのである。
紫色の尻を好む、 相撲が好きだが 腕を下に引くと抜ける、 麻幹(おがら)にとける。 左甚五郎が、人の尻でも食えといって木屑を水に放したという伝説がある。 八戸市櫛引では七日盆の日には馬をとるという。 昔駒引に失敗し、もう取らぬと約束したが、生きていけないので滝の明神様にこの日だけと願って許されたからだという(川合勇太郎『ふるさとの伝説』)。 下北半島の正津川の河童が悪戯をして困るのでショウズの婆さんに祈願して懲らしめてもらった。紫尻を嫌う。しかし一旦見こまれると逃れられず、友達や親戚に化けてきて必ず川に連れ込む。生まれつきの運命だという(中道寺『奥隅奇譚』)。