霊感大王(リンガンダイワン)

[中国の妖怪]
 靈感大王(灵感大王)〔líng-găn-dài-wáng〕(リン・ガン・ダイ・ワン)【中国語】

『西遊記』に登場する妖怪。通天河の主で、巨大な魚の怪物。正体は観音さまの飼っている金魚だった。

通天河の主、その正体は……

霊感大王は『西遊記』に登場する妖怪だ。通天河の主として君臨していた。雨を降らせたり、雪を降らせることができ、さらには河の水を凍らせることもできた。身体中に鱗のある巨大な怪物で、手から落ちた1枚の鱗の大きさがお盆くらいあったという。絵に描かれるときにはヒレや尾が人間の手足になっていることもある。

三蔵法師一行は通天河にやってきた。あまりに幅の広い河で対岸が見えないほどで、どうやって渡ろうか思案していると、音楽が聞えて来る。どうやら生きている人間のお葬式をやっているようだ。霊感大王というのが霊感大王廟に棲んでいて、雨を降らせる代わりに子供を生け贄として要求するのだという。そして、次の生け贄はこの陳の家の関保という男の子と一秤金という女の子なのだという。孫悟空はたちまち関保に化け、猪八戒を一秤金に化けさせると子供たちの身代わりになって霊感大王のもとへ向かった。霊感大王は食べようとした子供たちが妖怪になって攻撃してくるのでビックリ。慌てて通天河へ逃げ出してしまった。

霊感大王はどうやって報復しようか考えていた。タナゴが通天河を凍らせるというアイディアを出したので、霊感大王は通天河を凍らせた。そして魚たちが通行人に化けて氷の上を渡ってみせた。三蔵法師一行はそれを見て、自分たちも河を歩いて渡ろうとするが、これは霊感大王の思う壷。途中で氷が割れて一行は水中へと引き込まれてしまった。猪八戒と沙悟浄は元水軍、白馬は竜王の息子なので自力で脱出できたが、三蔵法師は霊感大王に捕らわれてしまった。孫悟空たちが必死の戦いを挑むが、霊感大王は水中にある屋敷の扉をガンと閉ざして外に出てこない。そこで孫悟空は観音菩薩さまのところに助言を求めにいく。観音菩薩さまが通天河に竹籠を差し入れてするすると引き上げると、籠の中には金魚が入っていた。何と霊感大王の正体は観音菩薩さまが蓮池で飼っていた金魚だったのだ。毎日、菩薩さまの説法を聞いているうちに妖怪になったのだ。こうして霊感大王は退治された。

もともと通天河の主だったという大亀が出て来て、霊感大王を追い払ったお礼に三蔵一行を対岸まで運んでくれて、一行は通天河を渡ることができたのだった。

《参考文献》