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ラードーン

[ギリシア・ローマ神話]
 Λάδων(ラードーン)【古典ギリシア語】 Ladon(ラドン)【英語】

黄金の林檎を守護する百頭竜!!

ラードーンはギリシア・ローマ神話に登場する百の頭を持つ竜(ドラコーン)だ。昼と夜の境目にあるとされるヘスペリア(夕べの国)で、夕べの女神ヘスペリスたちと一緒に、そこに生えている黄金の林檎の樹を護っている。古代ギリシアの壷絵には林檎の樹にぐるぐると巻きついた大蛇が描かれていることが多い。さすがに百の頭がついている絵はないが、頭が複数ある大蛇の絵もいくらかは残されている。ヘスペリスたちが水の世話などをせっせと行なっていて、ラードーンが黄金の林檎をもぎとろうとする人間から林檎の実を護っているのである。

この黄金の林檎の樹は、ゼウスとヘーラーが結婚したときに、それを祝って大地の女神ガイアが二人にプレゼントしたものである。ヘーラーはこの林檎の樹をヘスペリアに植えると、ラードーンをその樹の番人として任命したのである。ラードーンは怪物テューポーンとエキドナの子とも、ポルキュスとケートーの子とも、あるいはガイアの子ともされ、百の頭がそれぞれがさまざまな声色で、さまざまな言葉を喋る。決して眠ることはないとされ、一説によれば、不死であったともいう。

英雄、林檎を奪いにくる

ヘーラクレースは、12の難業の11番目の仕事として、この黄金の林檎を取ってくるようにエウリュステウス王に命じられてしまう。そこで英雄はまず、ヘスペリアの場所を探さなければならなかった。ゼウスとテミスの娘であるニュムペーたちに尋ねたり、海神ネーレウスを縛り上げて脅して場所を聞き出したりして、ようやくヘスペリアの場所を見つけ出し、ヘスペリアへ向かって旅立つ。

ところが、ヘーラクレースは直接、ラードーンと対決しなかったという。プロメーテウスが、彼の代わりにアトラースに林檎を取りに行かせるように助言したのである。アトラースといえば、世界の果てで天空を担がされている巨人だが、ヘーラクレースはアトラースに代わって天空を担ぎ、その間に、アトラースが黄金の林檎を取って戻ってきたというのである。というのも、ヘスペリアというのはアトラースの管轄だったからである。林檎の番をしているヘスペリスたちはアトラースの娘たちだったので、アトラースには容易に黄金の林檎をもぎとってくることができたのかもしれない。

ちなみに黄金の林檎は別の神話にも登場する。テテュスとペーレウスの結婚式にさまざまな神々が招待される中、不和の女神エリスだけが招待されなかった。それに腹を立てたエリスは「最も美しい女神に」と記した黄金の林檎を宴会の会場に投げ入れた。この林檎を巡って、ヘーラー、アテーナー、アプロディーテーの三人の女神が争いを始め、この三女神の争いがひとつの引き金になって人間界でもトロイア戦争が勃発することになった。エリスがどのようにこの黄金の林檎を手に入れてきたのかは語られていない。

《コラム:ヘスペリアとはいずこ?》
ヘスペリア(夕べの国)がどこにあるのか、はっきりしない。古くは西の果てにあると考えられていた。太陽が沈む国、死者たちの世界である。古代ギリシア人は大地の周りをぐるぐると世界河オーケアノスが流れていると考えていたので、ヘスペリアもその流れの近くにあると考えられていたようだ。やがてアトラース山脈(アフリカ大陸の北部に広がっている山脈)がアトラースと同一視されるようになり(ペルセウスがメドゥーサ退治の帰りに宿を借りたいと求めたところ、断られたため、メドゥーサの首を見せて石にしたのがアトラース山脈になったという)、アトラース山脈の近く、あるいは古代ギリシア人が理想の国と考えたヒュペルボレイオス人の国にあるとも考えられた。アトラース山脈の近くということから、ヘスペリアはイベリア半島のことではないかとする学者もいる。そしてそこから派生して、黄金の林檎はイベリア半島にはえていたオレンジのことなのではないかという説も出されている。

ヘスペリアはいずこ?
地図:ヘスペリアはいずこ?

ラードーン、星座になる!

ところで、ヘーラクレースが弓矢でラードーンを射殺したという別の伝承も残されている。この英雄とラードーンの直接対決を語る伝承では、ラードーンは英雄に弓で射殺された後に、ヘーラーの手によって天に上げられ、空に輝く星座になったという。それが北極星を取り囲むようにぐるりと天に横たわっている竜座(Draco)なのである。

《参考文献》

  • 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1979年)
  • 『ギリシア・ローマ神話辞典』(著:高津春繁,岩波書店,1960
  • 『図説 幻獣辞典』(著:幻獣ドットコム,イラスト:Tomoe,幻冬舎コミックス,2008年)