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エアリアル

[妖精]
 Ariel(エアリアル)【英語】
 אֲרִיאֵל(アリイエル)【ヘブライ語】
〔※ 読み方はエアリエル,エーリアル,アリエルとも〕

シェイクスピアの戯曲『テンペスト』に登場することで有名になった大気の精。作中では魔術師プロスペローの使い魔として活躍した。嵐を起こして船を難破させ、孤島に漂着させたり、幻想を見せたりすることができる。もともとは天使だったらしく、サタンと一緒に神に反逆して堕天した。シェイクスピアによって大気の精になった。

嵐を起こす空気の精霊!

エアリアルはシェイクスピア(William Shakespeare)の戯曲『テンペスト(The Tempest)』に登場することで一躍、有名になった大気の精だ。『テンペスト』の粗筋を簡単に説明してみる。かつてミラノ大公だったプロスペローだったが、12年前、弟のアントーニオーらによって地位を追われ、現在は孤島で娘のミランダと一緒に暮らしていた。一方、大気の精エアリアルはこの島の魔女シコラクスによって使役されていたが、使い物にならないということで、12年間の間、松の木の裂け目に幽閉されていた。魔女はその間に死んでしまったが、エアリアルはプロスペローに救われ、彼の使い魔となった。プロスペローの命を受けたエアリアルは、嵐を起こしてミラノ大公アントーニオーとナポリ王アロンゾーを乗せた船を難破させ、プロスペローの住む孤島へと船を導く。こうしてプロスペローの復讐劇が始まるわけだ。途中、ナポリ王の息子ファーディナンドとミランダの恋愛があったり、島に棲む怪物キャリバンが暗躍したり、アントーニオーがアロンゾーの殺害を企てたりといろいろあるのだが、最終的にプロスペローが弟のアントーニオーらを許して幕となる。エアリアルはその間、プロスペローの命令を忠実にこなしていく。そしてプロスペローに解放されて晴れて自由の身になって空へと帰っていく。

「tempest(テンペスト)」というのは《嵐》のことで、劇の表題にもなっている通り、エアリアルは激しい嵐を起こしてアントーニオらの乗っている船を難破させ、プロスペローの住む孤島に漂着させた。エアリアルは妖精らしく、火の玉に化けて水夫たちを混乱に陥れる。また、魔法で彼らを眠らせたりする。また、自在に風を操って船を孤島に誘導する。けれども、島に漂着した乗組員たちは髪の毛一本も失うことはなかったというから、風は完全にエアリアルによってコントロールされていたようだ。また、ハルピュイアに化けてみせるなど、さまざまな幻術を見せて、アントーニオーやアロンゾーを誑かし続けた。

天使? 悪魔? 大気の精?

もともとはユダヤ教やキリスト教の天使、あるいは天使長だったらしく、占星術などでは金星と結び付けられていたらしい1)。トマス・ヘイウッド(Thomas Heywood)が『聖なる天使たちの階級(The Hierarchy of the Blessed Angels)』の中で水の霊の1人としているという。けれどもair(エアー)《空気》やaerial(エアリアル)《大気の》のような単語からの連想だろうか。古くから次第に大気の精となっていったようだ。11世紀の初頭のミカエル・プセルス(Michael Psellos)はすでに大気の中に住む悪魔の一団として「Aerials(アエリアルズ)」という言葉を使っている。大気の構成要素で身体を形作るというので、これは大気の精という印象が強い。ミルトン(John Milton)は『失楽園(Paradise Lost)』の中でエアリアルを堕天使としている。エアリアルは《神の獅子》というヘブライ語に由来しているようで、6章の中に登場し、サタンとともに反逆して、アリオク《獅子のごときもの》、ラミエル《神の雷霆》らと一緒になって戦場に赴き、天使アブディエル2)に撃破されている。

スイスの錬金術師パラケルスス(Paracelsus)は四大元素のそれぞれに精霊を定義していて、空気の精霊はシルフとした。エアリアルはこのシルフと同一視されることもある。アクレサンダー・ポープ(Alexander Pope)はエアリアルをシルフと同一視していて、『髪盗人(The Rape of the Lock)』の中でヒロインの守護精霊の1人とした。

1) 『イザヤ書』29節では「エルサレム」のあだ名として「エアリアル」が言及されている。
2) アブディエル(Abdiel)はもともとサタンの配下だった天使で、神に反逆しようと部下たちを説得するサタンに対して、ただ一人、その申し出を拒絶して神のもとへと戻ったとされている。名前の意味は《神の奴隷》。

《参考文献》